海外生活で壁にぶつかった時に唱えよう!
── ケセラセラ(Que Sera, Sera)──
本連載のタイトルは、「サトセリの『ケセラセラ英会話』のススメ」。
粋な響きがありますよね。
「ケセラセラ」には「なるようになるさ」の意味があります。そういえば、イギリス生活は、ケセラセラの連続だったな。そういう意味において、連載のタイトルはまさにどんぴしゃりだと思います。
「英語がほとんど話せないのに、本当になるようになるのかしら」と、疑問に思うかもしれませんね。私もイギリスに来た当初は、そう思っていました。イギリスの大学で勉強したい気持ちは誰にも負けない自信はありましたが、英語力はさっぱり(トホホ)。
それでも4年間単位を一度も落とさず、しかも First Class Honours(優等学位区分の一つ)で卒業できました。まさに、「なるようになるさ」でした。今回は、私の大学留学時代にスポットを当ててお話します。
言いたいのに英語で表現できないもどかしさ
私が当時学んでいた大学の授業スタイルは、大きく分けて
- 講義
- ワークショップ
の2種類ありました。
講義は教授の説明を聞いてノートを取るというスタイルでしたが、ワークショップは少人数単位の授業です。講義のテーマを深掘りするために、『教授が質問したことについて意見を述べる』、『クラスメイトと話し合う』というのがメインのスタイルでした。
最初の頃は「いいなあ。私もあんなふうにペラペラ話せたら爽快だろうなあ」というふうに、ネイティブに憧れのまなざしを向けていただけでした。
けれども、授業を重ねるごとに「自分の考えをクラスで発表したい。せめて教授にかけられた時だけでもいいから答えたい」という気持ちがムクムクとわいてきたのです。
という気持ちは強かったものの、実力が伴わない。拙い英語を使って人前で話すなんてとても考えられませんでしたし、何をどのような順でしかも英語で説明したらいいのか全く分かりません。
「今日も何も発言できなかった……」というふうに、授業の後落ち込むことがいつしか日課になっていました。
そうだ、教授を味方につけよう
やや話が前後しますが、イギリスの大学は基本的に3年制です。けれども、海外留学生は正式に入学する前に、大学附属のファンデーションコースで1年間学びます。ファンデーションコースで選択できるのは、補助科目(subsidiary subjects)のみで、私は哲学とアメリカ研究を選択しました。
哲学なんて、日本語でも難しいのに無謀すぎますよね! ワークショップに出ても教授とクラスメイトのやりとりに圧倒され、蚊帳の外状態でした。
そして、寮に帰って復習した時に「そういうことか! あぁ、授業で分かっていればなあ」というふうに悔しい思いをしていました。
「このまま悔しい思いを続けるのはいやだ」と思った私は、教授に相談することを思いつきます。
1対1ならどうにか話せそうですし、しかも相手は教授。かなり独りよがりな思い込みですが、面倒見が良いことに加えて、下手くそな英語でも温かく受け止めてくれると思ったのです。
そしてある日、ワークショップが終わった後に勇気を出して哲学の教授にお願いしました。「私は英語にハンディがあって、耳よりも目で見た方が頭に入りやすい。次の授業でディスカッションする内容を事前に教えてくれれば、考える時間ができる分発言しやすい」と。
当時どのように英語でお願いしたのか忘れましたが、哲学の教授は私の提案を快諾してくれ、本当に授業のアウトラインを特別に作ってくれました!
それを頼りに自分の意見をまとめ、どうやって話そうか練習していざ本番。教授にかけられて練習した答えを言うなんて、シナリオみたいで恥ずかしかったのですが、かけられた時だけでも自分の意見を言えたことがとても嬉しかったです。
アメリカ研究の教授にも、同じことをお願いしました。その教授も「私もドイツ留学した時に、全く話せなかったの。だから、あなたの苦労は分かるわ!」と、快諾してくれました。
やっぱり教授はやさしい(涙)。
「英語がうまく話せなくてもなんとかなった」を地で行くエピソードでした。
本当は話せているかもしれない
ファンデーションコースが終わり、正式に大学に進学した時も、分からないことは教授と1対1で話すことを心がけていました。
そんなある日。1人の教授から、「1対1ならちゃんと英語が話せるのに、なぜクラスでは発言しないの?」と聞かれたのです。
言われてみればそうですよね。ヘタな英語ですが、教授とは会話が成立しています。自分の英語レベルを上げずに「なるようになるさ」というスタンスでいたら、恥ずかしさを感じることなく人前でも積極的に発言できていたかもしれません。
教授に指摘されたことをきっかけに、「ネイティブ並に話せるわけではないし、周りもそれを求めていない。もっと気楽に行こう。なるようになるさ」と思えるようになりました。
そう考えたら人前で発言することの苦手意識が以前よりも小さくなり、クラスメイトとのグループワークやプレゼンで発言するなど、以前よりもワークショップに積極的に参加できるようになったのです。
「なるようになるさ」と思うことで、できないと思っていたことができるようになったエピソードでした。
PREPで話そう
英語で発言する時に、何をどうやってしかも英語で話せば良いのか、頭を悩ませている人も多いかもしれません。私もそうでした。「あれも言いたい、これも言いたい。でも英語でなんて?!」と、頭がパニックになりました。
そんな時に役立つのが、PREPというフレームワークです。
PREPは、
Point(論点)
Reason(理由)
Evidence(根拠)
Point(論点)
の頭文字を取った造語で、スピーキングだけでなくライティングにも応用できます。
PREPには、結論を先に述べてその理由を続けて話すという特徴から、
- 聞き手は自分が知りたかったことの答えをすぐに知ることができて、ストレスを感じにくくなる
- 聞き手の心理プロセス(なぜそう答えたのか、なぜそう言い切れるのか)にそって話が展開するので、最後まで聞いてもらいやすくなる
- 話し手は、自分の意見を分かりやすく伝えられる
- 話し手は、「何をどのように話すか」を決めやすい
といったメリットがあります。
PREPの例をご紹介しましょう。
(結論)A子ちゃんに謝った方がいいよ。
(理由)あなたが遅刻したせいで、A子ちゃんはバスに乗り遅れたのだから。
(根拠)例えば、あなたがA子ちゃんだったら、謝ってほしいと思うでしょ?
(結論)早くA子ちゃんに謝っておいで。
誰でも分かりやすいような簡単な例を挙げましたが、アカデミックの場でも基本は同じです。
I think the answer is A.
Because it suggests that…
According to Professor xx, about 60% of…
From this point of view, I strongly believe A.
理由なら “because” 、根拠なら “for example” というふうに最初の言葉を決めておくと、言いたいことを整理しやすいですよ。
まとめ
何事もそうですが、自信がない時は内向的になってしまいますよね。けれども、結果的になんとかなったということは多いのではないでしょうか。
そう考えると、「なるようになるさ」ってライトな響きがあるけれど、真実をついた言葉なのかもしれませんね。
もし、将来留学を考えていて英会話を始めてみようと考えているのなら、「なるようになるさ」で、英会話が上達していく過程を楽しんでほしいです。
それではまた次回、お会いましょう!